
怪物
怪物 / 2023 / JAPAN / 125 mins
OUTLINE
『湊の脳は豚の脳なんだ!』
本作の舞台は大きな湖のある大きな町。小学校で男の子2人が喧嘩している。よくある子供同士の喧嘩と思われたが当事者2人の食い違う言い分は、家族、教員、そして社会やメディアを巻き込む大ごとへと変わっていく。そしてある嵐の朝、その喧嘩を起こした2人の男の子は忽然と姿を消すー。

日本の巨匠、是枝裕和監督の最新作。「そして父になる」ではカンヌ国際映画祭審査員賞を、「万引き家族」ではカンヌ最高賞のパルム・ドールを受賞。第1作の「幻の光」を除いて、自身でシナリオを全て手がけてきたことでも知られている。自らの手で物語を創造し、自らの手で演出し、自らの手で編集することで、人々の心を揺さぶる名作を生み出してきた。


しかし、本作はまさかの「東京ラブストーリー」、「カルテット」、「花束みたいな恋をした」で知られる坂元裕二のオリジナル脚本。韓国のソン・ガンホやぺ・ドゥナを主演に迎えている「ベイビー・ブローカー」などで、海外からも一定の評価を得ている是枝監督の世界観に他者が介在することはかなりリスクの高いことと思われるだろう。


しかしながら、プロデューサーの川村元気から企画を持ちかけられた是枝監督は、「坂元裕二」という名前を聞いた時点で、引き受けることを即決したという。何故これまでの流れとは異なり、脚本家とタッグを組み映画「怪物」が生まれたのか。それは互いに対する憧憬にある。
「基本的には自分の映画は自分で脚本を書いて来ましたが、誰か脚本家と組むなら誰が?という質問には必ず「坂元裕二!」と即答してきました。それは、そんなことは自分のキャリアには起こらないだろうとどこかで諦めていたからです、きっと。夢が叶ってしまいました」-是枝監督
「是枝さんは学年もクラスも違っていて話したこともないけど、時々廊下で目が合ったり、持ってるものを見て真似して手に入れたくなる、憧れの存在のような人でした」 -坂元裕二

坂元裕二はあるインタビューのなかで、自分が自動車を運転していたときの体験談を語った。横断歩道で青信号になったのに、前のトラックが動こうともしない。クラクションを鳴らしても微動だにしない。やがてトラックが動き始めると、横断歩道に車椅子の歩行者がいた。トラックの車体が大きすぎて、彼は歩行者を認識出来なかったのである。脚本家坂元裕二は、このことを本当に後悔したという。
「私たちが生きている上で見えていないものがある、それを理解していくにはどうすればいいのか、そういうことを物語にしたいと常々思っていました」


音楽は、今年3月に永眠した坂本龍一が担当。撮影場所である長野県・諏訪湖の風景を見て坂本のピアノの音色を浮かべたという是枝監督は、オファーの旨を書いた手紙とともに坂本へ送った。これに対し、坂本は同じく手紙で「体力的に全曲の書き下ろしはできないので、何曲かイメージしているものを形にしますから聞いてください」と返答した。
そうして映画「怪物」のサウンドトラックは出来上がった。諏訪の空気感や人々の生活風景に、坂本の柔らかく響くピアノは見事になじんだ。なかでも闘病生活のなかで綴られた日記的作品「12」からの2曲は、本当に胸を打つ。
本作のタイトルにもなった”怪物”は、一体何を指すのか。ぜひ一度鑑賞して感じてもらいたい。

TRAILER
SOUNDTRUCK
FILM INFORMATION
- Company : TOHO, GAGA
- Film Director : 是枝裕和
- Casts : 安藤サクラ, 永山瑛太, 黒川想矢, 柊木陽太, 高畑充希, 角田晃広, 中村獅童, 田中裕子
- 2023/ JAPAN/ 126 mins