
NOPE
NOPE / 2022 / U.S. / 130 mins
OUTLINE
『あの雲、少しも動かないぞー』
平穏な田舎町にあるハリウッド唯一の黒人経営であるヘイワード牧場。ある日、雲に覆われた巨大な飛行物体のようなものを目撃した牧場主の息子は、直後空から降り注いだ異物によって父を亡くしてしまう。妹にこの出来事を話し、その飛行物体の物的証拠を収めた動画の撮影をすることを決意した2人は、撮影技術者に協力を仰ぎこれを試みるが、想像を絶する事態に見舞われていく。


ジョーダン・ピール監督最新作。自ら制作、脚本、監督を務め1作目「GET OUT / ゲット•アウト」で第90回アカデミー賞を受賞し、鮮烈な監督デビューを飾った。2作目となる「US / アス」は前作同様に深いテーマを提唱し大ヒットを記録。そして3作目となるのが本作「NOPE / ノープ」。

「NOPE / ノープ」というタイトルには、
「ノープ(Nope)”という言葉にはいろんな意味合いがあるけれど、例えば僕はいつも、作品を観てくれる人たちの頭の中を覗いてみたくなるんだ。で、思うにきっと、ホラー映画は観たくないとか、あんなに暗くて異常な世界なんて“ムリ(Nope)”と言う人が結構いるのではないかなと思った。タイトルはそういう皆さんへの誘い(いざない)でもある。“気持ちはわかるよ。確かに怖い映画だ。でもね、そんなあなたを知ったうえで、このジャンルに招待している。席を用意しましたのでどうぞ”という僕の気持ちを表しているんだよ」
と語っている。牧場を経営する男を演じるのは、ダニエル・カルーヤ。ダニエル・カルーヤは『ゲット・アウト』で主演を務めており、ジョーダン・ピールとは再タッグとなる。「ミナリ」「ウォーキング•デッド」のスティーヴン・ユァンも参戦。



コメディアンとして2000年代からテレビを中心に活躍していたピールは、2012年にモンキーパウ・プロダクション(映画制作会社)を立ち上げると、コメディアンとしての出世作である「マッドTV!」で共にレギュラーとして活躍した盟友キーガン=マイケル・キーと「キー・アンド・ピール」をスタートさせ、クリエイターとしても本格的に歩みをスタートさせていく。

子どもの頃からホラーが好きだったというピールは、「笑いと恐怖の源泉は同じである」という哲学を胸にホラー作品にも手を伸ばし始める。満足できる作品が少なくなったという理由から『ゲット•アウト』を制作すると、初監督作ながらアカデミー賞4部門にノミネート、脚本賞を受賞とまさかの大成功。


ピールが携わってきたホラー作品に共通しているのは、意外性と寓話性が同居したオリジナリティにあふれる作品だということ。彼の描くストーリーは、予想を裏切る急展開によって化けの皮が剥がされ、同時に社会に潜む問題が浮かび上がってくるという、教訓が盛り込まれた現代のおとぎ話といえる作品ばかり。例えば、「ゲット•アウト」ではエンターテイメント性抜群のオリジナル脚本と共に人種差別問題をテーマにした。

最新作「NOPE / ノープ」では、バズり動画をカメラにおさめてひと儲けしようとする兄妹、よりスペクタクルな映像を求める映画撮影監督、そして観客動員を増やして金を稼ごうと前代未聞のショーを企画するテーマパークのオーナーが映し出される。それは、SNSなどで過度なスペクタクルへの依存性、注目することの陰湿な性質に苛まれている、現代社会を生きる私たちを揶揄している。他にもピール監督の現代社会の問題に関するメッセージが隠れているので是非注目して欲しい。

TRAILER
SOUNDTRUCK
FILM INFORMATION
- Company : Monkeypaw Productions
- Film Director : ジョーダン・ピール
- Casts : ダニエル・カルーヤ, キキ・パーマ, スティーヴン・ユァン, マイケル・ウィンコット
- 2022/ U.S. / 131 mins